飛び出し注意

オタク備忘録

心臓鳴らして胸を纏めてよ

2019.03.07の記録。


FINLANDSがすきだ。
2016年、少し肌寒くなった頃に私はFINLANDSの音楽と出会った。
出会って、その曲と、力強い言葉と、麻薬みたいな歌声に目も耳も心も全部捕らわれた。
そのとき私は大学生で。卒業制作をやっていて。終わった御褒美にライブに行って、とても楽しかった。
新曲のリリースやMVの公開を楽しみにしていた。ライブの発表がある度行ける日程を考えた。
2017年に社会人になって、シフト制で休みが取りにくい中をやりくりしてライブを見に行った。仕事帰りにスーツでライブハウスに駆け込んだ事もあった。定時に上がれなかったら上司を刺しそうなスケジュールだったことを覚えている。殺人犯にならなくて良かった。
このころにはもう私はFINLANDSを一生好きでいる覚悟をしていた。多分ハマった頃からライブに行くたびに手紙を書いていて、それは、今も続けている。もうすでに、人生で1番言葉を尽くしてるバンドだと思う。
2018年3月、記録博を経験する。5年間のうち、私は半分も追えていないけれど、それでも良かった。続けてくれて、出会ってくれた事を手放しに喜んだ。世界観もなにもかもを愛した。
その頃、少しずつ今とても好きなバンドがあるんだよ、と、本当に心を許している1部の友人に伝え始めた。
本当に好きなものを人に教えるのが苦手だった。好きじゃなかった。共有する楽しさよりも、壊される恐怖が大きくて。本当に好きなものを、大切な人に否定されたら、自我の弱い私は、きっと一生の傷を追うからだ。
音源を聴かせたりはしなかった。こういうタイトルの曲で、こういう歌詞があるよ、こういうライブをするよ。そう伝えると友人たちは「かっこいいね」と言ってくれた。MVを自ら調べて聞いてくれた。CDを買ってくれた子もいる。嬉しかった。
私の好きな人は、私の心から好きなものを、同じではなくとも、肯定して、好きだと分かってくれた。魅力的だと知ってくれた。
10月のツアーファイナル、CDを買ってくれた友人をライブに誘った。私は既にチケットをとっていたから、整理番号が離れてしまうけど。と言っても、見たいから、とわざわざ地方から出てきてくれた。ライブ中はバラバラになったけど、終演後にすごく良かったね、格好よくて、綺麗だったね、ライブだと印象が違う曲もあって、すごく楽しかった。と言われて、感想を言い合った。大事な時間を共有できるってすごいことだ。とても楽しくて、尊いものだった。そういえばこんなに素敵なことだった。大人になるにつれて怯えてばかりいたな。と思った。
11月、下北沢でのファイナル追加公演。そこでは「私達は恋愛だけで生きているわけではないから、人間になれる瞬間がどこかにある」と言っていて。その言葉が涙が出るほど嬉しかった。全てを肯定されている気持ちがした。今までも曲を聞く度に許されていると思うことが沢山あった。悲しみや苦しみを否定せず肯定せずただそこに横たわるものとしてくれる。それでいいと思わせてくれるのがFINLANDSだと私は思っている。そんなFINLANDSが、恋愛が蔓延る世の中で、他の物事であっても、人間なることが出来ると教えてくれた。幸せだったし泣いた。
そうして私の2018年は幕を閉じ、2019年に入る。3月にリリースがあるとわかった時、ツアーがあるとわかった時心から嬉しかった。嬉しかったなあ。
リリース日を空けておいてね、と言われたから、空けていたし、2019年の記録博が発表されてチケットを取って有給をとった。
2月14日にUTOPIAが公開された。白い布が揺蕩う美しい映像。私は、白い布がかぶっているというモチーフがとても好きなので、めちゃくちゃに湧いた。好きなひとが好きなことをしてくれる。こんなに嬉しいことは無い。毎日毎日繰り返し再生して、トレイラーが公開してからはそれも含めて暇さえあれば聴いていた。ライブで聴いて好きになった天涯の音源が手に入ること、スピード感のあるキラーチューンcallendの全景、配信の音源を再生しまくった衛生の再録、どれもがたのしみでたのしみだった。
3月5日。フラゲ日ということで仕事をとにかく巻いてやった。どうしても、受け取り店舗の営業時間に待ち合わせる必要があると、残業をこなした。跳ねる心地で階段を降りて速る心と同じように早くなる足取りで会社を出て店舗に向かった。そこではUTOPIAが再生されていた。受け取る時にレジの方が「かかっていますね」と笑ってくれた。私はCDが一巡するまで、店舗を出ることが出来なかった。
その日、UTOPIAの収録曲をリピート再生して眠った。
3月6日、記録博1日目。したためた手紙とチケットをもって、BITシャツの上にパーカーを着てキャップを被って出掛けた。FINLANDSのグッズで毎日を埋め尽くされていることが幸せだった。
UTOPIAからスタートしたライブは、記録博でありリリースイベントらしく、「セットリストに全てを込める」FINLANDSらしかった。格好よかった。久しぶりに見たライブは、こんなにもたのしくて、しあわせで。東名怪とメトロが聴けて、有給をとったかいがあるよなぁ、と嬉しくなった。
銀河の果てまでの前に語る少し寂しいエピソードも好きだし、「生きているだけでお守りになる」「会えなくなってしまっても記憶が自分を守ってくれる」という考えは、これからも私が生きていく上で、守ってくれる強い言葉だと思う。
それからなにより嬉しかったのはスプリットシングルでもカバーしていた、BARROND'OR
の心臓に咲く薔薇を聴けたこと。スプリットで聴いてとても好きになった曲だった。いつか生で聴きたいとかんじていたので、息を詰まらせるほど喜んだ。コシミズさんと塩入さんの声が重なりあってうっとりするほど綺麗な歌声が脳を包んだ。
callendを終盤に持ってきて締めるのは流石としかいいようがない。UTOPIAに始まってcallendでしめくくる美しすぎるストーリー。そして最後はクレーターでがっちりと終わらせる、完璧すぎるセットリストだ。
アンコールは無く、エンディングソングが流れはじめる。BIのような優しいメロディのバラード。「遊んでいようよ ふざけていよう」という言葉が入っているのにメロディはどこか寂しい。別れの歌のなのだろうかな、なんて思って泣きそうになりながら余韻に浸った。明日も体験できる幸せで満ち足りた帰路だった。
ㅤ記録博2日目。1日目よりも整理番号は悪かったが、同じような位置に入ることができた。2日目はハイライトーBacktogirlのしっとりとした幕開けで、自分の中同じくくりで好きな曲が続き、あまりにも分かられているなぁと既に涙腺が緩んでいた。UTOPIAからcallendに続く、展開と、さらにelectroを畳み掛けるスタイルがかっこよかった。UTOPIAは壮大な孤独を歌った曲だと聴く度納得してしまう。どういう生き方をしたら、孤独は自分自身で満足出来ないことだと気がつけるのだろうか。私の孤独はいつも他人に依存しているそれで、だからこそ塩入さんの語る孤独があまりにも凛と美しく見えた。UTOPIAがすきだ。
今、これを書くにあたりセトリを眺めたり、記憶を蘇らせているけれど、やはり浮かぶのはあの発表になってしまう。
あまりにもさっくりと、次のライブやリリースを告げるように、いやきっとそれよりも簡単に告げられた、ベース・コシミズカヨさんの脱退。聞いた瞬間に目が眩んで足がふらついた。涙が零れそうになるのを堪えて、「決断を嬉しく思う」という塩入さんを眺めた。コメントをする時に涙を浮かべるコシミズさんを見てもうダメになった。すきだという気持ちが溢れて、つらくて、でも1番浮かんでいたのは、「置いていかないで」だった。
「こんな発表の後でどう盛り上がったらいいか分からないと思うけど、今夜すごく盛り上がったという記録を作りましょう」、と言うので、涙を堪えて腕を上げた。エンディングの言葉を必死に聞き取って、昨日と違う印象を受けてまた泣いて、震える足で駅へ向かった。
向かう途中で、ライブを一緒に見てくれた友人に連絡をした。つらくて歩けなくなって、ミスドに入ってカフェオレを頼んだ。上がる湯気を眺めながら泣いた。それからふたりの様子をできるだけ伝えた。そうして彼女は「寂しいね」と言ってくれた。そう、寂しかったのだ。FINLANDSのふたりがあまりにも当たり前のように言って、先に進もうと前を向いているから、言ってはならないような気がしてつらかったのだ。でも言ってしまった。さみしい、さみしいよ。だってさっき、あの子のお祭りを、誰にリクエストされていなくても好きだから私達はやり続けるって笑いあっていたじゃない。そう思った。置いてかないで、は私の気持ちの悲鳴だった。割り切れない。FINLANDSがひとりになったとしても、きっと好きだと思えるだろうけど、私の好きなふたりのFINLANDSはいなくなる。夜に溶けてしまうようなコーラスも、かっこいいベースも、ちょっと間の抜けたトークにツッコミを入れる姿も、笑い合うところも、全部もう、もうステージで見れない。そう思ったらこんなにもさみしい。なのに2人はそれでいいと笑う。かっこいい、かっこいい、だいすきだ、でも、さみしい。この寂しさは認められてはいけないと思ったから、つらかった。だけど彼女が素直に寂しいと言ってくれたから、私もそれを許せた。乗り過ごしと乗り違えを繰り返して、なんとか家に着く頃には、少しだけ元気を取り戻していた。
思い返せば、後悔がこんなにもない。好きな曲はどれもライブで聞くことが出来たし、ひたすらに貪欲に傲慢に繰り返し繰り返し手紙を書いて、物販で挨拶をさせて頂いて、好きだと押し付け続けてきた。自分が行ける限りの公演に行って、楽しんで。最後の日のチケットも、そのあとすぐにひとりのFINLANDSを見るチケットも手配している。こんなにも振り返って、あの時行けばよかったとか、あの時伝えていればとか、そんな考えが浮かばないのは初めてだった。後悔がない、幸せなオタクをしていた。
4月10日までじっとしている事が出来なくて、予定はなかったけれど仕事終わりに3月9日、新宿SAMURAIに駆け込んだ。そこにはいつもと変わらず美しくて格好いいFINLANDSがいた。終演後の物販で、おふたりと言葉を交わすことが出来た。寂しいけど、楽しみです、と伝えていたら涙がぼろぼろ出ていた。気持ち悪いくらい重いオタクで少し恥ずかしかった。でも行けて本当によかった。発表されて次のライブが最後だったら、私はいつまでも2人にこだわってしまったかもしれない。
気持ちの整理をするために、こうして日記を書いている。綴っては辛くなって閉じて、もう今は4月だ。時間ががかった。でも私は今、すごく10日を楽しみにしている。いまでもふたりの最後だと思うとさみしい。対バンだから時間が少ないのも寂しい。でもそれでいい。私は私の寂しいを持って、4月10日を迎えたい。こんなに晴れやかな寂しさは初めてで、この気持ちがきっと私を豊かにする。
ああ、幸せだ。FINLANDSに出会えてしあわせだ。
4月10日を終えて、そして4月末には新しい、ひとりのFINLANDSを見る。塩入さんは、「変わらず応援して、とは言いません。ひとりのFINLANDSを見て判断して貰えたら」と言った。だから私は新しい姿をみるまではふたりのFINLANDSを好きでいる。きっと4月29日に、きっとまたFINLANDSに恋をする。
FINLANDSが、塩入冬湖さんが、コシミズカヨさんが、だいすきだ。
私をこんなにもしあわせにしてくれてありがとう、人生を豊かにしてくれてありがとう。4月10日を楽しみにしています。


2019.04.01 椎名